日常の一歩先の絶景 ~里山探検の勧め~

文:サポーターかっちゃんさん

絶景が人気

絶景が人気ですね。観光地のPRサイトでは「ここでしか見られない絶景」を謳い、旅の目的として絶景を見ること、また写真に収めることが大きな魅力となっています。InstagramなどのSNSでもハッシュタグ「絶景」が人気を博し、世界中の絶景を画像つきで紹介する「絶景プロデューサー」のFacebookページのフォロワー数は64万人を超えています。

上田では絶景が身近

しかしここ、信州上田で生活していると絶景はもっと身近に、日常の一歩先にあります。クルマで出かけると一時間圏内で絶景に出会うことが出来るのです。あまりにも身近すぎて、このことは住んでいる市民でさえ気づいていないことが多いと言えます。いつも見えているあの場所が、行ってそこに立ってみると絶景スポットなのです。

上田で絶景が楽しめる要素

上田は盆地でありながら周囲を急峻な山々に囲まれています。平地から突然、急な山が盛り上がってるような感じです。それも片道2時間前後の手頃な里山が多いのです。それぞれの山は地元住民に愛され、登山道や駐車場などが整備されています。だから週末、気軽に出かけられます。高原をドライブして車内から眺める景色もいいですが、やはり自分の足で登った先にある景色は別世界です。雨や雪が少なく日本有数の晴天率を誇ることも、上田で絶景に出会える理由の一つと言えます。

私はこのように楽しんでます

日常の一歩先の絶景、そのことに私が気付いたのがGoogleマップで市内を調べている時でした。ユーザーが投稿するのはお店や施設のクチコミだけでなく、周囲の山や登山道、駐車場などの情報もありました。そこには目を見張る素晴らしい景色の写真も添えられています。こんな身近に、こんな世界があったのか!既に里山歩きを楽しんでいる方々や、地元の方がマップ上に道しるべを置いてくれているのです。普段なにげなく目にしているあの山が、その向こうにあるあの山が、全て目指すべき絶景スポットになりました。以来、私は暇を見つけては里山の情報を集め、週末のたびに出かけるようになりました。自身の記録とSNSでの紹介を目的に動画撮影を行い、心地よく疲れた後で温泉に浸かって帰ってくるのです。カメラには数々の絶景が納められ、頂上で食べた美味しい物、道中の思い出が記憶に残ります。そんな贅沢な休日が、都会で過ごせますでしょうか。

ポピュラーな里山紹介

ポピュラーなところをご紹介します。上田市街地の北にそびえる太郎山は上田市民に最も親しまれている里山です。周辺の小学生が登山遠足で訪れるほどで、道は安全なんですが実はけっこう体力が必要な山です。登山ルートが複数あって、気分や体力に合わせて選べます。標高は1164m、山頂は開けていて上田市街地が一望できる絶景です。

四阿山(あずまやさん)は菅平高原を象徴する山です。標高は2354m、日本百名山にも数えられている立派な山で、里山というくくりではありませんね。この山は34万年前に噴火した火山の一部がカルデラの縁として残っているもので、山頂付近の荒々しい景色が素晴らしいです。広い駐車場が整備され(有料:200円)初心者でも比較的安全に登山が楽しめる山となっています。

塩田平の南には独鈷山(とっこさん)がそびえています。こちらも複数のルートがありますが、気を付けて欲しいのはどのルートを通っても頂上付近で危険な箇所を通過する必要がある点です。急な傾斜の岩場で鎖を掴んで登る、いわゆる「鎖場」があります。そのむかし山伏が修行していたと言われるだけにストイックさが求められ、苦労した後には塩田平の美しい風景と数々のため池が眺められます。余談ですが、里山の中にはこうした古代の山岳信仰と関わりの深い山があり、その痕跡を感じられるのも山歩きの楽しみのひとつです。

四阿山
独鈷山

マイナーだけどお薦め

あまり知られていませんが、興味を持ったらまず行ってみて欲しいお薦めの穴場をご紹介します。まずは千曲公園。ここは千曲川に突き出した「岩鼻」という崖の上にある公園です。すぐ下に「川と道の駅」があり、車を停めて歩いていける場所です。標高差100m、20分ほどの行程を、森の中のトレッキングを楽しみながら登ります。頂上の公園はまさに絶景スポット、雄大な千曲川とその向こうの山々を一望できます。ベンチや東屋があってのんびり過ごせ、道の駅で販売されている「馬鹿バーガー(ジビエ肉のバーガー)」を持ち込んで食べるのもお薦めです。

岩鼻

尾野山は丸子町生田にある里山で、市民でもその名を知る人は少ないと思います。愛宕神社という、山の中の小さな神社まで行くとその裏から道が続き、15分ほど歩くと頂上、尾野山城址に到着します(トータル30分ほど)。ここは真田氏が徳川の大軍を迎え撃つときに活躍したいわゆる「山城」で、それだけに周囲の景色が一望できます。

戦国ファンの間では「山城攻め」という楽しみ方があります。里山にはかつての山城跡がたくさんあって、石垣や土塁など、今も残る遺構を訪れて思いを馳せるのです。上田の北部、真田町の入口にある砥石(といし)城跡もそんな山城のひとつです。地元の人によって駐車場や登山道が整備され、気軽に訪れることが出来ます。ここは砥石城、米山城、枡形城、本城跡が尾根伝いに繋がっていて、景色も豊富なバリエーションが楽しめます。


えげつない場所も

ここまで紹介した場所は比較的安全、かつ一般的な範疇での絶景ですが、もっとアドベンチャー要素が強いスポットもあります。写真で紹介しているこれらの場所(仏岩、兎峰、鬼が城)は、危険が伴いますので十分に情報を集めて、不用意には近づかないようにしましょう。いろんな里山を登って体力や経験に自信がついてきたら次のステップとして検討してみてはいかがでしょうか。まさに、日常の一歩先にある絶景、異世界と言ってもいい景色が広がります。

仏岩

兎峰
鬼が城

その他の里山

ご紹介した以外にも上田から少し足を延ばせば、青木村の青木三山(夫神岳、十観山、子檀嶺岳(こまゆみだけ))、坂城町の葛尾山(かつらおやま)、立科町の蓼科山、東御市の烏帽子岳など、日帰りで様々なバリエーションの山が楽しめます。季節によって表情も違うので飽きることなく楽しめるのではないでしょうか。最近は「YAMAP」など登山愛好家のためのアプリもあり、情報が共有されているので、ぜひ調べてみてください。

忘れてはならないこと

自分の足で絶景に出会えるアクティビティをどの山も基本無料で楽しめるなんて、贅沢な環境だとは思いませんか。これは立派な「地方の財産」と言えます。ただ忘れてはならないのは、里山の整備にあたる仕事の皆さん、地元の皆さんの尽力でこの環境が維持されているということです。私たちはその皆さんのおかげで「日常の一歩先の絶景」を楽しめている点に感謝しなければなりません。また、安全に十分配慮し、かつ里山の環境保全にも十二分に配慮して楽しむことが、山歩きを楽しむ者の責務です。どんな山でも常に危険は存在し、注意を怠れば重大な事故になりかねません。くれぐれも、山を侮らず装備を整え、環境を乱すことの無いよう楽しんでください。その先に絶景が待っています!