里山の豊かさと、愉快な人間関係 感性の栄養がたっぷりの、健康的な生活がここにあった。(サポーター:玉崎さん)
上田の魅力的な環境
上田は都内からもアクセスが良く、降雪量も都内とほぼ変わらない。鎮守の森が如く山々に囲まれた町は、雨の翌朝に濃い霧が立ち込め、標高750mの稲倉(いなぐら)の棚田に上れば、眼下に広がる雲海に包まれた市街と、北アルプス連峰の稜線に切り取られた深青の空だ。
また、季節の変わり目で生じる太郎山の逆さ霧は、デイダラボッチの浴槽から湯水が溢れ出るようで息をのむ。
移住決断のきっかけ
まぁ、上田に住んでみての魅力は尽きないが、他の方も述べられているので、移住のきっかけから話せればと思う。それは、棚田との出会いと、人の繋がりといえるだろう。
2008年、稲倉の棚田オーナーとして田植え稲刈りに訪れたのをきっかけに、もっと棚田を知りたいと思い、本業傍ら都内NPO法人で活動してきた。そこで様々な人と出会い話すことは棚田の知識と人間関係を広げる。
さらに、自ら企画した「棚田CAMP」の主催は、稲倉の棚田保全委員会との交流が生まれ、田舎に住む親父に会いに行くような尊い絆ができた。
最終的に移住決断を後押ししたのは、保全委員会から地域おこし協力隊(棚田のある豊(ほう)殿(でん)地域担当)の募集にお声掛けいただいたこと。
移住するにあたり
牧大介著 『ローカルベンチャー地域にはビジネスの可能性があふれている』 は、心がけとして参考になった書籍。
《 (前略) 自分の夢は夢としてありながらも、気持ちよく地域の人に助けてもらえる存在になりましょう。ローカルベンチャーは、周囲に「この人たちを応援するのは楽しい」と応援する喜びを提供できる存在であるべきだと思います。 (後略) 》
地域の人は、理屈の正しさでなく「○○さんが言うんだったらやろう」と動く。つまり、その〇○さんに自分もなることが必要。それがあって初めて、外側にいた人間だからこそ気付く魅力を伝え、行動し、助けを借りながら“顕在化”していくことができる。
おかげでそんな活動が実を結び、R4年度 農林水産祭「むらづくり部門」にて最高賞の天皇杯を受賞するに至った。地域の人に助けてもらいながら、一緒に喜びを分かち合い皆が前向きに活動を進められるのは心地よい。
特に豊殿地域は当事者意識が高く、農村RMO(農村型地域運営組織)と言える「まちづくり協議会」が機能している。土壌としてそういう気質ある地域というのは、生き甲斐があり愉快だ。
卒業後の定着に向けて
地域おこし協力隊に着任してから気づけば2年半。あっという間の任期3年が終わろうとしている。コロナ禍の活動制約を踏まえた特例処置により、もう1年の任期延長を申請中とはいえ、ここから次の足場固めが必要だ。やはり、この豊殿地域に腰を据えて棚田に関わりながら生きたいと思っている。