【レポート】第16回うえだ移住テラス ~talk cafe~ ゲスト:森下さん

2024年3月23日(土)、定期イベント「うえだ移住テラス~talk cafe~」を開催しました。
今回のゲストは森下智美さんです。
愛知県名古屋市のご出身で3児の母。
小学生の時にソーラーカーに興味を持ったことをきっかけに電気工学の道へ進み、トヨタ自動車の系列会社に就職。2005年、高校の同級生だったパートナーとの結婚を機にパートナーの就職地である上田に移住されました。
現在は東御市在住ですが、時間があるとつい上田市内へ出かけてしまうそうです。
「子育て」をテーマに、共働きと子育て、上田市や東御市の子育て環境についてお話しをお伺いしました。

聞き手はAREC専務理事・センター長 岡田基幸です。
※当日、上田市内は大雪の為急遽オンライン開催となりました。

結婚後の再就職

――上田ではスキルを活かせそうなお仕事はありましたか?

自動車関連の仕事にこだわってはいませんでしたが、公開している求人の中からはピンとくる仕事はなかなか見つからなかったです。ハローワークで相談した際に、「求人がなくても図面の読み書きができる等のスキルを記した履歴書を書き、ディレクションしてみてはどうでしょうか」というご提案をしていただき、自らいくつかの企業に履歴書を郵送しました。

――素晴らしいです。上田地域は製造業が多いエリアです

そういった地域性のことも徐々に分かっていきました。
結婚後の暮らしを見据えて、産休・育休の取得のことなどをお伝えしながら就職活動を行い、数社からお声をかけていただきました。

――このお話しは移住後のお仕事を探すテーマにもなり、深掘りしたいですね!
当時、会社としては求人を出してなくても求職者が自ら履歴書を送ったことがきっかけで採用に繋がったという実績はあったのでしょうか。

理系の女性は少ないですね。当時、中途採用で理系で図面を書ける人は私一人だったと思います。自分が希望する条件をきちんと伝えて、会社と働く人の納得がいくようにすることは大切だと思います。「履歴書を自ら送る」ことは自信がないとできないと思っていたのですが、ハローワークの方から「できることに自信を持って書く」ことをアドバイスしていただきました。自動車業界は「改善」が好きだと感じていましたので「改善業務をしっかりとやっていきたい」とお伝えしました。自分の中にある思い伝えることが大切だと思います。

子育て・仕事・育休の取得

――ご夫婦ともご両親は名古屋にいらっしゃるということですが、子育てのシーンで大変だったこともあるのではないでしょうか。

そうですね。ヘルプがなくて、小さい子ども2人の時は大変でしたね。緊急連絡先はいくつか書くことになっているのですが、基本は私が第一連絡先です。当時は時短勤務をしていましたので子ども優先のスタンスでした。しかし、100%私がやると決めず夫にも連絡をし、話し合いで決めるようにしていました。
仕事の取組み方としてはいつでも引き継げるように、資料を個人持ちしない等いつでも共有できるように準備していました。

――なるほど。企業の人手不足が進む中で、いろいろな働き方をしたい方の採用、企業側のニーズも増えていますよね。その時にうまく業務を成り立たせるための工夫や仕組みを考える必要があり、森下さんは時代の先駆的なことをされていたのですね。

夫が育休を取ったことも大きかったです。
今から約15年前、一人目の子の出産後10カ月は私が育休を取得し、その後1年間は夫が育休を取得しました。夫は教員なので1年間というスパンでの取得がしやすかったようです。ちょうど夫の同僚も同じ時期に育休を取得していて、一緒に子育て広場などにも遊びに行っていました。夫自身も一人で子どもをみることに自信を持てたと思います。子どもがハイハイする、歩くという日々の成長に立ち合っていました。

――小さいお子さんがいらっしゃる中でのお仕事の復帰、家庭とのバランス等大変な時期だったと思いますが、いかがでしたか

そうですね、やはり葛藤しました。
「両立」と言われると、子育て100%、仕事100%の200%で頑張っていかないといけないのかと思ってしまいますが、自分のリソースは100%しかないので状況によって選択する必要がありました。最初は「子育ても、仕事も100%やりたい」と思い、すごく悩みました。完璧に考えてしまいましたが、頑張り過ぎなくても良いかなと思いました。

――上田市や東御市での子育て環境の印象はいかがでしょうか

一番に言えることは保育園の待機児童がないことでした。「保活」も行わなかったです。
この点は母親としての安心感に繋がりましたし、その安心感は子どもに返っていくのかなと思います。自分の「安心」を優先できました。
2番目の子が生まれる前に東御市に引っ越したのですが、ちょうど里山あそびの企画が始まった時期だったので土日はこちらに子どもを預けたり、平日私が有給を取って小さい子どものクラスにボランティアに入ったりもしました。一人の人として他の子どもに関わるなかで落ち着いて声掛けをするなど、客観的に子育てをみることができました。「私、お母さんをなかなかうまくやってる!」と。自分の子どもから離れる時間を取ることでいろいろと振り返ることもできました。

今、3番目の小学生の子どもには上田市の「アソビノ」という非認知能力をのばす教室に通わせています。子どもたちにいろいろな体験を積ませてくれる環境です。上の2人の子どもの頃はこうした教室はなかったので、都心にしかなさそうな先進的なことを取り入れてくれる教室が上田にもできてきているなと感じています。

――最後にお伝えしたいことはありますか

「子育てと仕事の両立」というテーマは今後ますます男女共に考えることが増えてくると思います。私は私が選んできた風景でしかなく、同じ経験、同じ育ち方をした人はいないのでそれぞれ選ぶことは違ってくると思います。時代やリソースの違いがあるので、ご自身やパートナーとの対話をしっかりすることが一番の解決策だと思います。

参加者からの質問

――結婚・移住・転職と環境が大きく変化する中で、どのように馴染ませていかれたのでしょうか

結婚前から夫は上田で仕事をしていたこともあり、初めは夫の友人家族と家族ぐるみで遊んでいただき、人との交流や上田での生活基盤が始まりました。生まれ育った名古屋と上田の環境の共通点もあり安心感もありました。自治会との関わりも親が行っていたことを行えば良いと思い、不安はあまり感じなかったです。


とても素敵な着物でご登壇いただいた森下さん。
お話しされる言葉の端々にも凛とした佇まいを感じました。
移住後の転職、子育ての葛藤や悩み、体験談からも一つ一つの状況に丁寧に向き合い、重ね、ご自身の在り方、家族の在り方を大切にされてきたことを感じました。
貴重なお話しをありがとうございました。