山間の郷 信州上田の山間地域からみた移住(サポーター:小宮山耕平さん)

私は、上田市端の西内地区と言う所に生まれ、ここで育って40年になります。
現在は花卉農家として夏場の花卉栽培、空いた土地を利用して酒米栽培をしています。冬は農業ができないため、スキー場に出稼ぎに行ったりと、四季折々な暮らしをしています。趣味はゴルフが大好きで、上田周辺のゴルフ場によく行きます。
ここは、広い上田市の端に位置していて、四方を山に囲まれたいわゆる中山間地域になります。今回は、そんな辺境に暮らす視点からお話しさせていただきたいと思います。
「移住」と聞くと、みなさんはどんなイメージをされますか? 都会の雑踏から離れ、静かでのどかな暮らし。といったところでしょうか? それぞれのライフスタイルを実現できる場所。といった感じでしょうか? 恐らく、色々な想像を働かせることでしょう。

では、ここでリアルな田舎の暮らしをご紹介しましょう!
私の住んでいる地域は、過疎地域にあたります。高齢化社会の縮図のような地域です。電車も無ければ路線バスも1時間に一本。。。車はマストの移動手段になります。当然スーパーも30分車を走らせないとありません。小学校も保育園も閉鎖になりました。といった具合に住む地域で無くなりつつあります。
また、地域を守っていくために必要不可欠な活動もあります。自治会と呼ばれる地域暮らしを運営していくための組織活動、有事の際に地域の暮らし・財産を守るため消防団活動。こういった地域のための活動にも参加しなくてはならないのです。
当然、成り手が少ないので各々への負担も決して少なくはありません。
。。。といったように、これがリアルな田舎暮らしです。これだけ読めば、移住なんてするもんじゃないと思うかもしれませんね。
でも、綺麗事だけじゃ語れないのも事実なんです。
特にそういった地域のボランティア活動への参加は、移住された方が参加しているのをあまり目にしたことがありません。本来であれば、移住と地域活動はセットにして考えていかないと成り立たないんです。
しかし、決してネガティブなことばかりではありません。
その地域に溶け込み、横のつながりを形成していけば、人と人との穏やかな繋がりが構築され、都会には無い田舎暮らしか実現できると思います。
また、中山間地域ではなく、田舎でも電車の通る地域や中央に近い地域に目を向けると、この事例とは別世界があります。
移住を考える際は、田舎ならではの理想だけでは語れない煩わしさとセットにして考えてみるのも参考になると思います。

そんな生活の中で、私事に戻りますが、6年前に「HEARTBEATまるこ」と言う任意農業団体を作りました。農業を経営する面々を中心にコミュニケーションを図る組織です。メンバーの中には上田に移住して営農活動をしているメンバーもいます。実際に移住をし農業を通して仲間になってみると、私たちの持ち合わせていなかった視点から話ができたりと、私たち自身も刺激になり、楽しい暮らしが行えるようになったりもします。
移住の最大の壁は、そこに元々暮らす方たちとのコミュニティを作れるかどうかだと思います。各々が移住をしてきて、好き勝手暮らしているというスタンスを地元住民はよく思わない話もよく耳にします。しかし、そこさえクリアできて地域に溶け込むことができれば、皆さまが思い描く田舎の暮らしが実現できるかと思います。
「移住を希望される方に伝えたいこと」と言うテーマでお話ししてきましたが、田舎暮らしのリアルをお話しさせていただきました。
今は、守ることしかできない田舎ですが、外からの移住者の視点から、田舎再構築ができる日を願って今回のご案内にさせていただきます。
